Home > MMM > MARQUEE Vol.85:やくしまるえつこ

MARQUEE Vol.85:やくしまるえつこ

  • Posted by: MMMatsumoto
  • 2011年6月12日 06:21
  • MMM
2011.6.12.jpg

さー、やくしまるさんだ。

その前に。
この間コーストで相対性理論を観たんだけど、
バンド・クオリティ上がってましたねー。
Itokenのドラム参加は、
これまでどおりリズムに多彩さを与えているし、
key も加わって隙間感無くさないよううまーく埋めてて滑らかで、
そこにZAKさんがPA参加して立体音響が素晴らしく、
今の理論はライヴも鉄壁だー。

ZAKさん、知ってる?
フィッシュマンズとバッファロー・ドーターの専属PAさん。
あの音響を作った張本人で、音楽趣味は硬派なんだけど、
本人は物静かににこやかで柔らかく器ある人で。

で、アート・リンゼイがソロで、
「NO NEW YORK時代から変わらないゾ」的な
トリッキーなギターワークに冴えを見せて、
根っからのボサ/ブラジリアンのテイスト込みで、
アヴァンな感覚をユーモラスに伝え、
もう一組、CORNELIUSこと小山田くんがG、
同じくCORNELIUS GROUP のD、荒木さん、
そして小山田くんとはたま~にユニット組んでて、
もちろんバッファロー・ドーターのB&Syn、大野さん、
という布陣で何曲かをプレイ。
その後、理論単体だったんだけど、
アート・リンゼイ、小山田くんも参加してのアンコールでの理論が
かなりヤバかったです。
「ウォーー! FANTASMA以降」のエフェクティヴなギターワークと。
やくしまるさんとの波長とか。

て言うか、これは僕個人の意見だけど、
小山田くんが今コラボすべきは絶対やくしまるさんだと思ってる。
実験をポップに持っていける発想と
ユーモアや悪戯のツボがピッタリだと思うから。
全曲とは言わないから一緒に作品作ってほしい。
いやー、これは聴いてみたい!
きっと辻川くん(映像の)達とも波長合うはず。

今回のマーキーでもテーマとなった"ときめきハッカー"を
この日もやったわけだけど、
やくしまるさんは特殊センサー付きのめがねをかけて、
まばたきするたびに、それがヴォイス変換されて、
単語がループされるという。それを曲に持ち込む。
あと、心臓の鼓動も低音の打音になっていて。
都内屈指のスピーカー・システムを持つコーストとZAKさんのPAで
音、かなりクリアに出てました。

で、本の話。
今回のマーキーのやくしまるさん記事、全体にパツパツでした。
やれて良かったし、間に合って良かったです。
アート・ディレクションとデザイン、そしてスタッフィングは、
前々号 MARQUEE Vol.83(capsule号)のねごとで
超絶ディレクションだった吉田ユニさんが担当。

まずユニさんとこで、やくしまるさん含め打合わせ。
その様子は、「ユニさんに訊く」の所で少し掲載したとおり。
打合わせ段階からもうやくしまるワールドでした。
その時、一体やくしまるさんが今回何をやっているのかの説明を受け、
僕もユニさんも「えーーー!!!」みたいな。
僕は「この人、何考えてんだぁ」ってゾクゾクしました。
もう「面白い事、やろう」っていうアート事とか表現事じゃなくて
「え!?物理?科学?犯罪?」って感じで、そもそもがブッ飛んでる。
あの歌声とフワッとした雰囲気と、ギャップあり過ぎ!
それで真鍋大度氏に速攻インタビューを取らなければならないことも分かって、後日すぐ連絡。

音楽なんだけど、
"個人"がミニマル化される中で、
個性とかいう"物語"は脱色されていって"情報"に。
その情報を科学的に信号としてサンプリングして、
曲として再構築したのが"ときめきハッカー"だけれども、
そこには"表現"という名の"個人情報流出"があって、
このシステムを非合法に使えば、もう犯罪の域だなとも直感したから、
真鍋氏とはそういう話もした。

例えて言うと、心電図をとりました、と。
それはその人自身もコントロール出来ないまでに"固有"。
その人自体であるけど、物語は持ち込めない"情報"なわけで。
これを不特定多数にさらすということです。
じゃあ"表現"って、そもそも何?という根本的な問いどころか、
道徳感を超えてしまう論理がそこにはあるわけで...
例えば、ハッカーっていうのは物凄くコンピューターに詳しい。
その詳しさ自体に善悪はないわけです。
それを、どういう心理でどの方向に使うかだけ。

やくしまるさん達がやっている事は、
もちろんこれを音楽・曲としてポップに作品化してるわけだけど、
根本となっている論理やシステムには、
どこまでが表現なのか、どこからが犯罪なのか、
といった問い掛けをはらんでいる。
やくしまるさん達は、その曖昧な、
時代や人によって180度解釈の変わる領域の事や価値観を、
もっと言えば、人間のその曖昧さを、
音楽というものを通じて、善悪とか正しい/間違いの判断つけず、
まるで資料・情報を提示するかのようにアウトプットする。
そこのフラットさ、ニュートラル感が凄い!
というかアプローチが、
所謂ドレミファっていう"音楽"とはまったく違う。
彼女が実験的に映るのはそこだけれども、
でもそれを"実験"と印象づけずに居れるバランス感覚こそ、
"やくしまるえつこ"だと僕は思ってます。

だから発想的には現代アートの人だと思うけど、
やり方が間違ってる(笑)というか。
もはや現代アートっていう型すら通り抜けていて。
それでポップに印象づけらているんだと思ってます。
その"間違い"こそが彼女のオリジナリティかと。
で、その"間違い"は、彼女の感覚頼りな部分が大きいかと。
ここから始まって構築する論理性を一方で持ち合わせているんだと思う。

今回の撮影は、どうなっているかと言うと、
すべて実写で、合成一切無し。
"電気な"テープルもお皿もピッチャーも、
壁を意識させるための鏡や額縁も、
すべて美術さんに作っていだきました。

で、これ、立体に見えるけど、それは錯覚です、人間の。
テーブルとか、台形にして背景を黒にしているから、
そう見えるだけで。
すべて上から糸でつり下げられた平面物です。
その前に台置いて、やくしまるさんに座ってもらっただけです。
テーブルに座ってるふうに見えますよね。
P42-43の見開き写真は、それら平面物をすべて床に置いて、
その上に、ただ寝てもらって、
キャタツに登って、つまり真上から撮ってます。
でも、テーブルの上に横たわってるふうに見えますよね。
それが錯覚というもの。
やくしまるさん達がやっている表現の仕方とよく似てますよね。

この微妙なズレ感がいい感じに不思議ー-に
ポップでキャッチーだと思います。
このへんの、電気をオモチャっぽく、それもガーリーに持ち込むセンスのいい遊びっぽさが、さすがユニさん!
やくしまるさんの"理知的なゆるさ"にピッタリ。
P44 の4つの写真を組み合わせたデザインも最高だ。

あと、やくしまるさんからの「分身学」の回答は、
彼女の表現の根幹に触れていて、わかりやすいと思います。




Home > MMM > MARQUEE Vol.85:やくしまるえつこ

Search
Feeds
Tag Cloud
Links

Return to page top